1. データをどう読むか

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1.1 ダイノマシンてどんなもの

ダイノマシン(正 式名称 : DynoJet Dynamometer) はシャシ・ダイナモメータ、あるいはダ イナモメータ・シャシと言われる装置の一種で(以降シャシ・ダイナモと略し ます) Dynojet Research, Inc. の 製品です。

Dynojet Model 200 Dynamometer

シャシ・ダイナモは、ローラの上に駆動輪をのせて模擬走行することで、動力 性能や排ガスを測定したり、トラブルの診断や調整等、走行中に起こる事象を 停止した状態で再現して各種作業を行うための装置です。完成車両の状態でエ ンジンの性能測定や設定作業ができる、非常に便利な装置です。しかし従来は 高価かつ大掛かりな装置であるために、メーカでもないととても導入できない 代物でした。一部大型ショップに、BOSCH 社の小型装置が導入されていました が、一般のショップで導入するにはまだまだ敷居の高いものであったと思いま す。

これに対してダイノマシンは、Dynojet 社が自社のキャブセッティングキット 開発用につくり出したもので、用途を絞り混むことで装置を簡略化し、普通の ショップでも導入可能な小型かつ簡便なものとなっています。この装置の登場 によってはじめて一般ユーザが、カタログデータではない現実の性能曲線を見 ることができるようになったといえると思います。

また従来のシャシ・ダイナモは大型で、ほとんど建物の中に固定されているの に対して、ダイノマシーンは車に積んで移動することも可能なため、サーキッ トでの出張測定サービスや、アメリカで行われている大型トラックを利用した 移動ダイナモサービス などの新しい使い方も可能になっています。

1.2 ダイノマシンでなにがわかるか

メーカが保有するような大型のシャシ・ダイナモは、駆動輪を乗せて回すロー ラを電気的に制御することで、単純に走行抵抗を模擬する以上の機能をもって います。実際の車重に相当する加減速時の慣性を再現したり、負荷を変動させ ることで、どのようなアクセル開度でも車速を一定に保つような制御ができ、 かなり正確な実走行のシミュレーションが可能です。

しかしダイノマシンではこういう細かな制御は一切できません。1999 年から は、ローラーにかかる負荷だけは制御できるオプションが発表され、それをあ らかじめ組み込んだ Model 250 Load Control System も発表されています。

一般のダイノマシンで測定できるのは、特定の負荷におけるローラとエンジン の回転数がどのくらいのスピードで上昇したかというデータだけです。このデー タとローラの慣性質量や回転抵抗から逆算して、タイヤが発生した駆動力を求 めてエンジンの馬力として表示しています。

極論するとダイノマシンは、アスレチックジムにあるエアロバイクと同じ物で す。それをどのくらいの速度で加速していけるかということを測定して、馬力 を算出しています。じつは実際にバイクを全開加速させて、スピードの上がり 方かエンジンの回転数上昇を測定するだけでも、ダイノマシンと同じようなデー タを測定することは可能です。

タイヤの直径やギア比と車重, 走行抵抗や空気抵抗のデータが必要ですが、一 般的な値を仮に設定してもそこそこのデータは算出できますし、ギアをニュー トラルにした惰力で走っているときの減速状態から計算することも可能です。 馬力の算出は、パソコン上の表計算ソフトでも原理的にはできますが、Home Dyno など、専用のソフトも開発されています。

1.3 比較のしかた

ダイノマシンが有効といえるのは、できるだけ同じ条件で測定したダイノマシ ンのデータ同士を、比較する場合だけと考えてください。一台のバイクでセッ ティングを変えたとき、どのような変化をするのかをみるのには、そのための 装置ですから十分役にたちます。ただし、ダイノマシンで良かったセッティン グが、そのまま実走行でも最良のセッティングになる確立は 100% ではなく、 実走行による検証が必要です。

一般的にダイノマシンのデータは、駆動抵抗などによりカタログデータの何割 落ちなどといわれます。しかし同じようにはかっても、測定対象のバイクの特 性とダイノマシンの測定法との相性により、この「何割」が変わってしまいま す。さらに同じエンジンでも気温や気圧、湿度の影響で馬力が変動しますし、 タイヤの状態、ダイノマシンへのバイクの固定の状態、さらには測定時のスロッ トルの操作法一つでも測定値は変わります。ですから、経験則で数字を補正す るのもあまり意味は有りません。

エンジンの馬力は、測定条件でかなり変化してしまいます。アクセル全開で負 荷を掛けて 3000rpm を維持させて測定したときと、アイドリングから一定負 荷で 6000rpm まで加速したときの 3000rpm のデータは異なって来ます。つま りダイノマシンは実走行のシミュレーションではなく、あくまでダイノマシン という装置ではかったときに、エンジンがローラに対してどれだけの力を与え たかを測定しているにすぎません。

これはカタログに載っているクランク軸におけるエンジン出力はもちろん、実 際にバイクを路上で走らせたときの性能と比べても、かなり違いの有るデータ です。ですから厳密にはダイノマシンのデータは、あくまでダイノマシンのデー タ同士での比較しか意味を持ちません。たしかにカタログデータと比べると、 カーブの形などはそれなりに似た傾向を示しますが、絶対値はもちろん形状も 完全に同じになることはまず無いと思います。

・カタログでは 100ps あるはずなのに 80ps しかない。故障かそれともカタログデータが嘘?

性能曲線にあきらかに不連続な乱れがでていたりすれば、異常の可 能性が有ります。ただし、異常なのはバイクではなく、測定である 可能性も有り、実際に走ったときの感覚や、同じ仕様の他のバイク のデータと比べて見ない限り、これだけで判断するのは危険です。

カタログ馬力との比較は、メーカーと同じ条件でエンジン単体で測 定してみない限り、検証不可能です。

・友人の同じバイクと測定しにいったら自分のバイクのほうが 5ps 低い。ハズレかな?

二台だけではわかりません。まったく同じバイクを計ったときに、 そのダイノマシンのだす結果がどのくらいの幅で振れるのか。また 同じバイクを、もっと何台も集めてどのくらいデータがばらつくの かを見ないと、なんともいえません。

・点火系を改造してダイノマシンで計ったら先週の結果よりも 3ps UP! やった!!

同じ仕様のバイクで同じ改造をして、やはり同じような結果が出る のならば、その改造はたしかに効果が有るといえます。しかし、一 台だけで測定した場合、とくにアマチュアの場合は、改造前後での 測定間隔が数日から数週間になってしまう場合がほとんどです。こ の場合、数馬力, 数パーセントの変化は単なる測定誤差や、測定条 件の違いである可能性が十分にあります。

・評判の添加剤いれたら、前後でグラフ全域 2-3ps UP!。同じ日に 同じマシンで測定してたからバッチリ。帰り道でもしっかり体感できた!!

まったく同じ時間を開けた測定を、添加剤の投入無しにやったらど うなると思いますか? グラフの形状がほとんど変わらず、そのまま 上下にずれたような場合は、測定誤差である可能性が非常に高いと 思います。

さらに添加剤の中心成分そのものの効果以外に、その成分を溶かし 込んでいるベースになる液体で、エンジンオイルの粘度も変化する 可能性など、誤差になる要素はいろいろ考えられます。添加剤の効 果は、耐久性や騒音など多くの要素を総合的に判断しないとなんと も言えません。ダイノマシンで効果を測定するのには向かないもの だと思います。

体感はさらに厄介で、プラシーボ効果があります。とくにダイノマ シンのデータを見ていたりすれば、プラシーボ効果はさらに顕著に なるはずです。それを承知で、「気分が良くなっただけでまぁいい か」程度に、軽く考えておいたほうがいいとおもいます。

経験のあるショップは、ダイノマシンのデータから、トラブルの前兆や原因を 予測したり、エンジン改造時に効率良くセッティング作業を行うことができま す。これはやはり、実際とダイノマシン双方のデータを蓄積していればこそで きることです。

1.4 で結局なんなの?

以上のように、ダイノランの数字とグラフだけ読んで一喜一憂するのはまった く無意味ですが、せいぜい直線加速のタイムと最高速 (公道でやれば道交法違 反)、抽象的でテスターの主観や営業的配慮が入りまくるインプレッション記 事、あるいは自分のフィーリング程度しか頼るものの無かった一般ライダーに とって、画期的な装置であることは間違い有りません。

問題は精度と再現性です。同じモノをはかったときに、測定結果はどのくらい ばらつくのかがわかれば、本当になんらかの違いが出ていると言えるには、ど のくらい差が出ればいいのかがわかります。誰かがなんらかの仕様変更をした ときにに出た結果が、二人目, 三人目でも同じような数字で出れば、次の一人 も同じ結果を出せる可能性は極めて高くなります。

ダイノマシンのデータを有効活用するには、一回の測定ではなくデータを集め ることが第一歩。とはいっても一人で条件を変えて測定できる回数は限られま す。ダイノマシンでの測定は、たいした走行風も当てずにエンジンをブン回し ますから、あまり頻繁にやるとバイクが終ってしまいます。ダイノランの料金 も馬鹿にはできません。

だとすれば、同じバイクに乗るオーナ同士での情報交換ほど有効なものはあり ません。全国に散らばる 1600 台以上の BUELL オーナが、思い思いに改造し た BUELL や走行距離、使用条件もまちまちな BUELL。このデータを集めて共 有すれば、一回数千円のダイノランのデータを「フ〜ン... 案外馬力出てない んだ」の一言で終らせずに、何倍にも楽しむことができるようになると思いま す。

もちろんフツーのオーナはアマチュアですから、結果を客観的な数字で他人に 示す必要なんて有りません。たとえ実際の加速性能が悪くたって、乗ってる本 人が楽しければそれでオッケーなのが趣味のバイクの世界です。それでも自慢 の愛車のデータを他人と比べれば、思いきり優越間を感じることも有るでしょ うし、歯軋りして雪辱を誓うこともできるはず。やっぱり比べなきゃ面白く有 りません。

そんなわけで全国の BUELL にのめり込んでるオーナのみなさん。ここは一つ 張り切って参戦をお願いします。ドノーマルの走行距離による変化を見て整備 の目安を付けるもよし、DIY の御手軽ローコスト改造で高価なショップ改造に 迫るか、それとも収入の大部分をブチ込んで家族の顰蹙を買いながら一瞬の優 越感を目指すか。楽しみ方は個人の自由。DIFFERENT IN EVERY SENSE の精神 を忘れずに。


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